フルチャージでぶっ飛ばせ
ガソリンバイクと比べ、電動バイクの走りは至っておとなしい。しかしだからといって、そのスリルと興奮を過小評価してはならない。
ガソリンバイクの燃費の良さを考えると、電動バイクなんてまだ先の話…と思う人もいるかもしれない。しかし最新電動バイクの性能を知れば、その考えも変わるだろう。
もちろん、手軽に給油できるガソリンバイクのライダーたちと長距離遠征するのはもう少し先になるが、街中でのクルージングやサーキットでタイムを競う分には、これから紹介する3モデルがトップクラス。衝撃的とも言える興奮を与えてくれるはずだ。
ゼロ SR/F
ゼロの「SR/F」は、中型電動バイクに求められる性能の業界ハードルを引き上げた――ゼロが目指すのは、単に電動バイクを販売することではない。電気でしびれるような興奮をライダーに与えたいと考えているのだ。だから「SR/F」の外観、体感、パフォーマンスは、ガソリンバイクのそれに引けを取らない。カウル類がないネイキッドバイクスタイルで、むき出しのバッテリーと格子状のフレーム、肉厚の前輪と後輪が精悍な印象。シートは高さ78センチと低めなので、ほとんどのライダーは足裏が地面にしっかり着くはずだ。
「SR/F」は小型のモーター「ZF75-10」を搭載。回転数4500rpmで最大出力は110馬力だが、このバイクの真骨頂は199Nm/1200rpmが生み出す爆発的な加速力にある。ギアやクラッチを使わず電動モーターだけで、走り出した瞬間からスムーズに加速できるのはとにかく楽しい。最高速度は200キロに制限されているが、「ストリート」「スポーツ」「エコ」「レイン」の4つの走行モードにより(+「カスタム」モード)、自分好みの仕様で走行可能。重量220キロの「SR/F」にまたがるのは少々難儀だが、一度乗ってしまえば、軽量なカフェレーサーを走らせているような気分になる。街乗り+高速道路走行の最大航続距離は198キロ。予備バッテリーを積めば最大322キロまで延長可能だ。急速充電システムにより、フル充電にかかる時間はわずか1.8時間。1万9495ドル。zeromotorcycles.com
ライトニング 「LS-218」
ヤバイほどのスピードを求めるなら、このバイクが適役だ。「LS-218」の最高速度は約351km/h。量産型電動バイクとして世界最速であるばかりか、エンジンバイクを含む量産型バイク全ての中でも最速なのだ。低位置のハンドル、硬いシートなど、生粋のレース仕様と言える車体に積まれた180kW液冷式インテリジェント・パワー・モジュール・モーターは、最大出力241馬力、最大トルク289Nmを走り出した瞬間から叩き出す。だからスロットルを回す際は、ハンドルをしっかり握る必要がある。「LS-218」の0-97km/hは2秒足らず、0-161km/hはわずか5秒。公式発表の最高速度は296km/hだが、バイクの走行性能を変えるリアスプロケットと空気抵抗を減らすフェアリングをオプション選択することで約351km/hも実現する。なお、タコメーターとバッテリー残量計以外の計器類はほぼレース仕様なので、サーキット以外の場所ではほとんど使うことがないだろう。
車体重量は225キロと決して軽いとは言えないが、ハンドルの切れは最高だ。ブレンボ製の4ピストンキャリパーを備えた直径320ミリのディスクブレーキによる強力な制動力も手伝って、 2013年の公道レース「パイクス・ピーク」では2位を引き離して圧勝している。標準搭載バッテリーでの最大航続距離は161キロだが、オプションのバッテリーパックを積めば257~290キロは走行可能。DC急速充電を使用した場合、フル充電にかかる時間は最短30分だ。3万8885ドル。lightningmotorcycle.com
ハーレーダビッドソン「ライブワイヤー」
“V型2気筒エンジンバイクの王者”が電動バイクを売り出すといったら、ちょっとショックだろうか。しかし、ハーレーダビッドソンが顧客層拡大のために投入した電動バイク「ライブワイヤー」は、ハーレーならではのワイルドさとデザインを気高く継承している。外から見える冷却フィン付きバッテリーケースはフレームにネジ止めされ、車体を支える剛性パーツとして機能。モーターと共に車体中央に格納しているその外観は、まるで飛行機のようだ。ハーレーの特徴ある唸りは上げないものの、「ライブワイヤー」は『スター・ウォーズ』に登場するスピーダー・バイクのようなモーター音を響かせる。独自の永久磁石型モーター構造により最大出力は105馬力、最大トルクは117Nm。最大トルクを瞬時に発生するため、0-97km/hは3秒かからない。
また驚くべきことに、ハーレーはこのバイクに社外パーツを採用している(前後のブレンボ製ブレーキや、SHOWA製のフロントおよびリアサスペンションなど)。しかしもちろん、ブレーキロックを防止するABSなど、独自の安全技術「リフレックス・ディフェンシブ・ライダー・システム」は搭載。249キロという車体重量だと、急ブレーキ時のABSは特に重要となる。また、タッチスクリーンから選択できる4つの走行モード「スポーツ」「ロード」「レンジ」「レイン」他、自分好みの細かい調整が可能なカスタムモードも用意されている。
ホースバックライドで知られる他のハーレーと違い、「ライブワイヤー」は前傾姿勢で乗るスタイル。乗り心地がスポーツバイクに近いという点は興味深い。リーンアングルが45度と山道のカーブも十分攻められるようになっているが、街乗り+高速道路走行の最大航続距離は153キロのため、人里離れた所まで走らせるのはやめた方がいい。ハーレーは街乗りの最大航続距離は235キロと謳っているが、電池が切れれば走れなくなるので注意が必要だ。なお、DC急速充電を利用した場合、フル充電完了までは1時間もかからない。2万9995ドル。harley-davidson.com