健康で長生きする
自宅にWHOOPのウェアラブル・フィットネス・トラッカーが届いた。送り主はアマゾンではなく、カリフォルニア州、パームスプリングス近郊のランチョ ミラージュにあるウエルネスリゾート、センセイ・ポーキュパイン・クリーク (sensei.com)だ。中年にさしかかった私達夫婦は、不眠症が改善したという友人の勧めで、このリゾートでの5泊プランを予約していたのだった。普段は仕事が終わるとハッピーアワーで一杯呑んで帰宅、深夜までテレビドラマ「ロー & オーダー」を見た後はキッチンで夜食の繰り返しの毎日で、リゾートでの規則正しい生活とはペースが違うため、バケーションの1ヶ月前から、このトラッカーでバイオデータ収集を始めるのだ。
続いてリゾートの担当者から電話がかかり、「何に喜びを感じるか」「食事は規則正しくとっているか、間食は多いか」など、事前アンケートについてフォローアップの質問を受ける。電話を切る前に、滞在中のスケジュールは前もって知りたいか、それとも到着後でいいかを確認されて会話は終わる。
ハワイの系列スパ、センセイ・ラナイのプログラム・オペレーション責任者のケリー・ジョージウは、こうした細かい情報収集によるプログラム作成について、「私達は長期的な視野で考えています。目標は長寿であり、80歳になっても元気に歩けることを目指しています」と語る。
パームスプリングス空港から車で20分ほど走ると、リゾートの正面ゲートに到着。ゲートが開いてもまだ目的の建物は見えず、230エーカーの広大な敷地をプライベートゴルフコースに沿ってヤシの木や多肉植物の間を通り過ぎ、ロバート・インディアナのザ・テン・ナンバーズの彫刻を過ぎると、ようやくオラクル創業者、ラリー・エリソンの旧宅が姿を現す。リゾートは昨年、エリソンが友人で協力者でもあるデビッド・アグス博士(ガン研究の権威、CBSニュース医療部門解説員)とともに、自らの屋敷を22室のリゾートに改築したものだ。
到着後のチェックイン手続きはなく、スタッフがやってきて自己紹介をし、自然光が降り注ぐ開放的な客室に案内される。荷ほどきをしたら、リゾート内のセンセイ・バイ・ノブで最初の食事だ(減量キャンプではないので、美食が楽しめる)。午後は担当者と1回目のプライベートセッションを行う(セッションは計3回)。セッションはリラックスした雰囲気で行われ、担当者との話し合いの中で「仕事中、もっと頭が冴えるようになりたい」とか、「左足首の慢性的な痛みを何とかしたい」など自分の目標を明確に定める。
2回目のセッションまでに、最新の診断技術を駆使して最大酸素摂取量、歩行や垂直跳びのデータなど、フィットネスのバイオマーカーを収集、ゲストの健康状態を把握する。2回目のセッションでは、プログラムを始める前の心構え、現在の栄養状態、目標や運動の好みについて担当者と話し合い、健康カウンセリングやスパ、ゴルフ、テニスなどを組み合わせて4日間のスケジュールが決まるのだ。
ジョージウはゲストから収集した情報をもとに、「携帯電話が睡眠の質に与える影響」など、ゲストの悪い生活習慣についても話し合い、ライフスタイルの変化を促すという。リゾートのスタッフは情熱にあふれ、その分野でトップクラスの人材ばかりで、ゲストと話をするうちに、本当に変化を望んでいるか、単に好奇心なのか見分けることができるそうだ。「転機に直面している場合は、急な変化は逆効果なので、現時点で最適な方法を探します」と、ジョージウは語る。
彼女によれば、ゲストがリゾートを再訪すれば、そのプログラムは成功だそうだ。プログラムの結果が出なかったから来た訳ではなく、帰宅後にプログラムの効果を感じ、さらなる成長を求めて戻ってきたからだと語る。プログラムの最後のセッションは、「私の計画」と名付けられ、「足首の痛みに対処するために歩く時間を確保する」とか、「料理を作る」など、具体的に今後の計画を話し合う。6日間のプログラムが終わる頃には、バイオマーカーは改善、体調も良くなっているはずだ。毎日のように耳にしていた、「あなたは健康で長生きできる 」という言葉を確信しながらゲストは家路につく。5泊6日のオプティマル・ウエルビーイング・プログラムは1泊1,580米ドルから。