ハーブ&スパイス
スパメニューを理解するのは、創作カクテルのメニューを見るのと同じくらい難しい。マティー1杯を注文するのに一体いくつの材料を検索したことだろう。スパへ行ってもラベンダーやカルダモン以外の名前がメニューに並んでいると、2時間のトリートメントで何をするのか全く想像がつかなくなってしまう。結局、いつものディープティシューマッサージを選んでしまう前に、ハーブとスパイスの世界ツアーに参加するとしよう。その奥深い世界を知れば、新しいトリートメントに挑戦する勇気が出ること間違いなしだ。世界の5つの地域から、トップクラスのスパが利用するスーパープラントを紹介しよう。
ラテンアメリカ
「ダミアナ」モンタージュ・ロス・カボス、メキシコ
古代の薬草ダミアナは、かつてはマヤ人の媚薬として、またアステカ人の強壮剤として、長い歴史を通じてその薬効が重用されてきた。現代では、香草の香りのするカクテルにそのリキュールが使用されている。低木のダミアナはカモミールに似た味で苦みがあり、頭痛や胃痛に効くハーブティーとしても用いられる。ダミアナは乾燥させた葉をサラダに加えたり、粉末の錠剤を飲んだりすることで、手軽に抗酸化物質を日常に取り入れることができるスーパープラントだ。
メキシコ、バハ・カリフォルニアの、サンタマリア湾に面した全122室のオーシャンフロント・リゾート、「モンタージュ・ロスカボス」 (montagehotels.com)では、スパでダミアナを使ったトリートメント、ザ・ジュエル・オブ・バハ(560米ドル)が受けられる。2時間のコースは、スクラブから始まり、ダミアナとアガベハニーを使ったラップ、さらにはフォーハンドマッサージで筋肉の緊張をほぐしてくれる。トリートメントが終わって、着替えたら、スパ特製ドリンク、ダミアナ・エリクサー(不老不死薬)をどうぞ。
アジア
「ヨモギ」ペニンシュラ東京、日本
古来より、ヨモギは皮膚、神経、胃、膝、腰など、あらゆる不調に効く万能薬とされてきた。ヨモギは多年草で抗炎症作用があり、痛みや腫れを抑える鎮痛効果がある。またシチューや肉料理に加えると、独特の香りで肉の臭みが消え、消炎効果も期待できる。ヨモギのエッセンシャルオイルはアロマテラピーでも使用され、リラックスした香りとともに記憶力を高める効果がある。
大都会の喧騒から離れ、静寂の中に佇むペニンシュラ東京 (peninsula.com)では、24階のうちの2フロアをウエルネス施設に充てており、室内温水プールからは都心の眺望が楽しめる。ペニンシュラ・シグネチャー・トリートメントの85分「キ・ヒーリング(350米ドル)」は、3つの樹木の香りで深いリラックスを促してくれる。椿オイルのスカルプマッサージは顔まわりの緊張を緩め、クワの葉で血行を促進、ヨモギでストレスを軽減し、体全体のバランスを整える。このトリートメントにはリフレクソロジーやヨモギのホットパッドも含まれており、疲れを取り除いてバランスを整える日本古来の伝統療法をベースにしている。
アフリカ
「トゥルシー」ロイヤル・マンスール、モロッコ
ホーリーバジルの名で知られるトゥルシーは、一見、家庭菜園のありふれたハーブに見えるが、サラダの材料ではない。鮮やかな緑のハーブはインド半島原産で温暖な気候を好み、鎮静作用があることで知られている。トゥルシーのエッセンシャルオイルはアロマテラピートリートメントで使われ、その消炎効果はクリームやマスクにも生かされている。「ホーリー」という名前が示す通り、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神と関係があるハーブで、インドでは聖なる植物として崇められている。
マラケシュには53のリアド(伝統家屋の宿)があるが、2010年にモハメド6世によって建てられた ロイヤル・マンスール (royalmansour.com)には、面積27,000平方フィートの3階建てのスパがあり、トゥルシーを使った強力なデトックストリートメントが受けられる。75分のラサヤナ・デトックス・ボディ・バフ(260米ドル)は、ナッツの殻を使った力強いスクラブから始まり、トゥルシーのホットパックで肌を鎮静させ水分を補給する。トリートメントは単体でも、リゾートの新しいウエルネスプログラムの一部としても予約可能。
ヨーロッパ
「エーデルワイス」バドラッツ・パレス、スイス
1965年に公開された映画、サウンド・オブ・ミュージックの劇中歌であるエーデルワイスには、「小さくて白く、清らかで明るい」という歌詞の通り、アルプス山脈に自生する可憐な花を咲かせる植物だ。外見の美しさもさることながら、肌に潤いやハリを与えて明るく見せるアンチエイジング効果があるため、クリームや美容液にも使われている。また入浴時に花びらを浮かべると、リラックス効果が得られ、肌に栄養を与えてくれる。
スイス・アルプスの町サンモリッツでは毎年、極寒の2月に開催される雪上競馬、「ホワイトターフ」の期間中、世界中のセレブがバドラッツ・パレス (badruttspalace.com) に集まる。レース会場である湖を見下ろす全155室のホテルにはパレス・ウエルネス・スパが併設され、スパ内には室内と屋外プールが設置されているる。「アルプス・リカバリーbyアルペオール・フェイシャル・トリートメント(50分240米ドル、80分300米ドル)」は、エーデルワイスを使って、冬の寒さと厳しいアルプスの環境で痛んだ肌を修復、保護してくれる。
米アメリカ
「白睡蓮」レイク・オースティン・スパ・リゾート、テキサス
熱帯・亜熱帯地域の池や湖で栽培される白睡蓮の花には鎮静作用があり、古くから伝統医学で利用されてきた。また傷を癒したり、その抗酸化物質がフリーラジカルによるダメージから守ってくれる効果があると言われ、大きな白い花びらは、オイルとしてマッサージやストレス解消のトリートメントに使われている。
テキサス・ヒル・カントリーに位置するレイク・オースティン・スパ・リゾート (www.lakeaustin.com)では、「ゴールデン・オーラ・ローズ &キャビア・フェイシャル(790米ドル)」で、白蓮の香りを堪能したトリートメントが経験できる。湖畔のウエルネスセンターで受ける100分のシグネチャー・トリートメントでは、キャビアエキスやコエンザイムA、さらにはフィトエッセンシャルオイルを使って肌に栄養分を与え、回復を促す。